☆独断と偏見に充ちた愛のエンタメ感想文☆
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『BIGGEST BIZ 〜最後の決戦!ハドソン川を越えろ〜』 @下北沢本多劇場
BIGGEST BIZ

2001年『BIG BIZ 〜宮原木材危機一髪〜』から始まったBIZシリーズ。
ラストの役者紹介のとき、座長の松尾貴史が
「続編もお楽しみに」とお遊びで発言したことから、
その後、2003年『BIGGER BIZ 〜絶体絶命!結城死す?〜』が上演され、
「またやるんですよね」と今度は半ば確信犯的発言で
観客の面前で、後藤ひろひとの了解をとりつけ、
それぞれ一度づつの再演をした後での、まんをじしての完結編。

小さな木材会社が松尾演じる<健三>のいたずらによって
とんでもない危機に巻き込まれる。
しかし、会社はそれをきっかけにドリームチームを結成。
大ドンデン返しで危機を乗り切ったとき、会社は一日にして百億を儲け
巨大化していた、というのが大まかなストーリー。
第2弾が上演されたとき、第1弾の主要キャストであった
粟根まことが、他の舞台に出演しており、
スケジュールが合わなかったことから声のみの出演となり、
出演シーンがなかったことから、
第2段で社長の座についた、坂田聡演じる<加賀>も
第1弾同様、ラストの大ドンデン返しで
さらに資産を増やして巨大化した会社の犠牲となり転落人生を歩むハメに…。

ラストとなる今回の公演では、ついに海の向こうにオールキャストが集結。
それだけでも大事だというのに、さらに、そこに
強盗まがいの日本人男女が入り混じり、大勘違い合戦はデッドヒートする。
BIZシリーズの見どころは、芸達者な役者たちが
些細な勘違いを繰り返すたびに、事態を、
本人たちの意に反して、深刻で手のほどこしようがないほど
どうしようもなく大きくしてしまい
そこから、一致団結して危機を乗り越えるカタルシスにある。
だからこそ、この仲が良いのか悪いのか、一見したらよくわからない
5人組(健三・神埼・木太郎・川島・皿袋)はドリームチームと呼ばれ
観客は<そんなことあり得ない話>の虜になるのである。
何も考えず、ひたすら、バカな勘違いのスパイラルに巻き込まれ
大逆転劇で幕を下ろす、このシリーズに教訓や説教臭さはいらない。
ところが!である。
今の今まで、そのやり方でうまくやってきたというのに
ここにきて、教訓めいた台詞が鼻についた。
いや、ひょっとしたら、今までにもそんな台詞はあったのかもしれない。
達者な役者がさらりと言う分には嫌味に響かなかった
というだけの話かもしれない。
今回、このシリーズのカタルシスをぶち壊してくれたのは
篠原ともえである。
一生懸命なのはわかるが、残念ながらこの作品は
一生懸命が見えてはいけない芝居なのである。
もっと言うなら、いい加減に見えないと失敗なのである。
ところが、彼女の台詞のすべては、この作品のいい加減な雰囲気を
ことごとく破壊してくれた。
その破壊力たるや、トホホ…である。
折角のラストを飾る作品。
再演の際には、彼女の役を違う人に変えて見せてくれるよう、
切にお願いしたい。

この1本だけ見ても、十分楽しめる内容に仕上ってはいるが
やはりこれを見るなら、BIZシリーズをひととおり見て
すみずみまで、味わいつくして欲しい、と個人的には思っている。
| theater | 23:20 | comments(2) | trackbacks(2) |
『贋作・罪と罰』 @Bunkamuraシアターコクーン
贋作・罪と罰

この芝居、大竹しのぶ&筧利夫コンビで上演された、
前回も観ているのだが、ひどく難解だったことをよく覚えている。
今回もそう覚悟して臨んだのが、物語は拍子抜けするほど
恐ろしく親切で理路整然としており、誰がどう見てもわかる作品になっていた。
そのせいか、小さな世界をやがて途方もなく大きな世界へと変貌させていく
お得意の言葉遊びは控えめで、脚本に関しては、
およそ野田戯曲の特徴はさておき…という感じだった。
代わりに…といっては何だが、
今回は演出家・野田秀樹ここにあり!というくらいに、
狭い空間を存分に活かして役者を見せる、凝ったステージングが冴えわたった。
会場中央にステージを構え、全方向からくまなく役者が見えるという仕掛け。
各々がイスを持ち、時に効果音の一部を担当するなど
台詞はなくとも、ほとんどの役者がほぼ全シーンに出ずっぱりだった。
観客も、自然、物語世界の一員として、
芝居を構成する傍観者役を担うことになる、という仕組み。
役者自身がイスとポールを動かすだけで、
芝居の流れを途切れさせることなく行なわれる場面転換。
間違えて舞台に乗ってしまったような役者がひとりもおらず、
こちら側の感情が滞ることなく、ステージに没頭できたことが大変うれしい。
松たか子は、生身の姿を惜しげもなくさらけだすことで、
理想のために道徳という一線を超える、三条英役に説得力を持たせ、
さらに透明感のある凛とした美しさをも感じさせた。
相手役の才谷梅太郎を演じた古田新太は、
およそ今までのキャラクターからは想像出来ない
シリアスで2枚目の志士を好演。
まだまだ底知れない無限の可能性を再認識した。
クライマックスでは、役者の息づかいが聞こえてくるほどの
緊迫感で会場全体が満たされ、すべてがひとつになる恍惚の時を
久しぶりに体感することが出来た、しあわせな一夜だった。
| theater | 23:47 | comments(2) | trackbacks(0) |
舞台版『電車男』
電車男ステージ

 WOWOWステージ中継にて
 録画鑑賞

他メディアが<純愛>を全面に押し出してきたのに対して、
舞台版では「人として成長することとは?」というのが
いちばんのテーマであり、特徴であったと思う。
ヲタの電車男と対照的な、イケメンエリートサラリーマン(河原雅彦)を
ロム専門の住人として登場させることにより、この物語は深みを増した。
社会に適合できないその他の毒男と、
社会に適応するためにさまざまなことを捨ててきた男。
ヲタはある意味、多分に純粋なのだ。
純粋すぎるがゆえに、社会では生きていくことが出来ない。
他人と共存していくには、どこかで自分自身を妥協せねばならないから。
さらには、その自分とも折り合いをつけねばならない。
潤滑な社会生活を送るには必要な術だ。
それを出来なかった者がヲタになる。
舞台版で最も盛り上がったのは、
電車男がエルメスに告白するかどうか迷う場面。
それ自体は、映画版でも、テレビ版でも、変わらない。
が、この舞台版では、途中からスレに参加するようになった
イケメンエリートサラリーマンが、重要なひと言を放つのだ。
(以下うる覚え)
「お前が怖いのは、エルメスの答えじゃないだろう?
お前自身が変わってしまうことなんじゃないのか?」
「誰だって、変わるのは怖いさ。
でも人間にとって必要なのは変化なんだ。
一番悪いのは、その場で止まっていることだ!」
そう、人にとって成長とは、変わること。
そのために不本意にも主義主張を変えることだってある。
だが、それが生きるということでもあるのだ。
イケメンエリートサラリーマンは、
ヲタが持つそうした事柄を、社会と折り合いをつけるために捨ててきた。
だからこそ、スレに参加することは意に反した偶然からだったものの
自分がかつて持っていた、純粋さや理想を追い求めるヲタの電車男に、
途中から惹きつけられ、やがては応援するようになったのだろう。
電車男の純愛もさることながら、同時にイケメンエリートサラリーマンの哀愁を
この作品は描いていたという点で、どのメディアよりこの舞台版が
私の一押しである。

電車男 舞台版
電車男 舞台版
既にDVD化されておりますので、ぜひどうぞ。
| theater | 22:38 | comments(2) | trackbacks(1) |
『キレイ』
キレイ

 WOWOWステージ中継にて
 録画鑑賞


主演の酒井若菜が本番直前に体調を崩し、途中降板。
急遽代役にたったのが鈴木蘭々だった。
奥菜恵と南果歩が演じた初演を見ていたため、このニュースを知った時には
「今からでダイジョブか?」と思った。
この作品の場合、通常以上の台詞をしゃべり、
なおかつ歌も覚えなければならないのだ。

しかし、その心配はまったくの杞憂であった。
さすがプロである。
これら全ての要素を、
短期間で舞台にのせられるまでの状態にしただけでも拍手モノだが、
代役にもかかわらず、鈴木蘭々の歌の表現力は
初演の奥菜恵を大きく上回る素晴らしさだった。
その分、演技力はいまひとつだったが、時間がなかったのだから仕方あるまい。
ミサを演じた高岡早紀の不思議な透明感は、
南果歩のそれよりもはるかに純度が高く、
その分、悲しみや苦しみの結晶がキラキラとした台詞となって
見ている者の心に降り注いだ。
ケガレを演じた鈴木蘭々の演技が奥菜恵のコピーのようだっただけに
彼女には救われた気がした。
酒井若菜は私にとってまったく未知数の女優であり
それゆえ、初演とはひと味もふた味も違ったケガレ役を期待していた為、
今回の降板は非常に残念だった。
しかし、代わりにチャンスをつかんだ鈴木蘭々が、
この作品をきっかけに、
新たにミュージカル女優として活躍するような日がこないだろうか・・・
と別の期待が生まれたステージであった。
| theater | 15:26 | comments(1) | trackbacks(1) |
『ダブリンの鐘つきカビ人間』 @ル・テアトル銀座
ダブリンの鐘つきカビ人間

旅行中の若いカップルがとある山中で道に迷い、
一夜の宿を求めて山小屋へと辿りつく。
山小屋の住人は古くからそこに住む老人であった。
彼らはその土地で遠い昔に起こった、ある物語をきかされることになる。

後藤ひろひとの作品にハズレはない。
起承転結がはっきりしたわかりやすいストーリーは
エンターテイメントに徹しており、観劇初心者にはうってつけだ。

初演と変わらぬストーリーを、役者を変えて再演した割には
あまり代わり映えしなかった、というのが素直な感想。
童話のような物語が、やがて残酷な悲恋モノへと姿を変えていくのだが、
どうもこの悲恋具合がメランコリックすぎて好きになれない。
あまりにも表現が直接的すぎて深みに欠ける。
やはり寓話の世界が、やがて現実世界とリンクしていく、
前に発表された『人間風車』は、
<戦慄のホラー>などという形容がついているが、
その残酷さといい、哀しみといい、『ダブリン・・・』をはるかに凌いでいる
というのが、私の感想である。

どちらも未見でこれからDVDで鑑賞予定の人には
『ダブリン・・・』からご覧いただくことをオススメする。
| theater | 14:16 | comments(0) | trackbacks(0) |
『偶然の音楽』 @世田谷パブリックシアター
偶然の音楽

ポール オースターの同名小説の舞台化。
妻に逃げられ、娘を姉夫婦にあずけるしかなかった、主人公ナッシュの元に、
ある日、それまで疎遠だった父親の遺産20万ドルが転がり込んできた。
彼は真っ赤なサーフの新車を買い、あてのない旅に出る。
そして、そろそろそんな旅も終わりにしなければ・・・
と思っていた13ヶ月と3日目、謎の少年ポッツィに出会う。
それがすべての物語りの始まりだった。

ナッシュを仲村トオル、ポッツィを小栗旬がそれぞれ演じ、
脇を三上一朗、大森博史、小宮孝泰という安定したベテラン勢が
固めたバランスのよいキャスティング。
現代アメリカ文学の旗手と呼ばれている
ポール オースターの寓話的世界観を、見事舞台上に再現した
台本・構成・演出を手掛けた白井晃の手法は完璧だった。
原作の持つ、不条理で絶望的で投げ遣りなのに、
どこか飄々として静謐な空気を、そのまま舞台の上に乗せ、
観客をアッという間に虚構の世界へと引きずり込んでしまった。
ラストを知っているにもかかわらず、初めて原作を読んだときと同様
二転三転するストーリーに振り回された。
予定調和を潜在的にのぞむ心を、ことごとく裏切り、
進んでいく物語に、最後までドキドキ、ハラハラさせられ、
救いのないまま最後がやってきてあっけにとられたあの時。
「ひょっとして、舞台は違う結末が待っているんじゃないか?」
と予定調和のラストを期待させるあたりまで、原作を読んだときの
心の動きをそっくりトレースしている自分に驚き、次に鳥肌がたった。

ひとりひとりの役者は、計算されつくされたチェスの駒のような動きで、
場面転換や時間軸の移動をスムーズに進行させ、
私たち観客は物語の奥へ奥へと誘われていく。
単純なエンターテイメントとしての芝居ではなく
立派な芸術作品としての芝居がそこには存在していた。
冷静なのか、無鉄砲なのか、よくわからない得体の知れない主人公、
ナッシュを演じた仲村トオルは、静かな中に、不気味な情熱を感じさせ、
かたや血気盛んな若きギャンブラー、ポッツィを演じた小栗旬は、
他の出演陣に比べて、演技の質はいまひとつだが、
若さゆえの勢いと、スラリとした容貌で、
ポール オースターの世界を最も忠実に具現化させていたと思う。

この演目が発表されたときには、正直、
舞台化など無理だと思っていたが、それは杞憂に終わった。
世田谷パブリックシアターは座席数600席のプロセニアム形式の劇場で
どこからでも舞台全体を見通せるのが大きな特徴。
ピンマイクではなく、舞台の両袖下にスタンドマイクを設置し、
生声を拾う形で見せてくれたのも、ありがたかった。
マイクを通して聞こえる声と生声とでは臨場感に圧倒的な差が生じる。
今回、私はラッキーなことに、前から4列目という
かなり好位置で鑑賞出来たため、きちんと役者の表情まで見ることが出来たが、
表情が読めない位置で見た人にはいったいどんな風に伝わったのか、興味がある。
そうした人たちには、小説そのままの佇まいをしていた
小栗旬の演技の方が、案外、よく見えたかもしれない。

蛇足だが、この日はマチネがワンステージだけだったため
カーテンコールは通常より長く行われ、
ポッツィから素の小栗旬に序々に変化していくサマを楽しむことが出来た。
段々と明るい顔付きになり、最後のほうはステージ上から
会場全体に大きく手を振ってサービスする若者らしい溌剌さが微笑ましかった。
袖に引っ込むまで客席を見ていたため、一度など舞台上の小道具にぶつかり
苦笑いしていたのが印象的。
これからを大いに期待出来る役者だと思う。
テレビも舞台もこなせる素晴らしいバイプレーヤーになってくれることだろう。

偶然の音楽
偶然の音楽
原作はこちら。
| theater | 23:58 | comments(0) | trackbacks(1) |
『Shuffle』
シャッフル  

 WOWOWステージ中継にて
 録画鑑賞



実際に劇場で見たときはかなり席が後ろだったため
見えにくかった役者の表情がリアルに見られるのが
よいところ。

WOWOWのステージクルーは優秀で
舞台作品を単純に録画するのではなく
独自の視点で再構成してTV版として見せてくれる。
いっそ、WOWOW版としてDVDでも出して欲しいくらい。
仕方ないので、自分でパッケージ化して保存している。
後藤ひろひとの脚本に外れはなく、
見所は?といえば
石野真子嬢が歌う「ハートで勝負」

♪ワンペア ツーペア スリーカード
 ノー ノー それでは勝てません

ご機嫌である。
| theater | 20:15 | comments(0) | trackbacks(1) |